転付命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

(平成18年4月14日最高裁)

事件番号  平成17(許)33

 

この裁判では、

委任事務終了前における委任者の受任者に対する

前払費用についての返還請求権の被転付適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,抗告人は,Aから,

債務整理事務の委任を受け,同事務を処理するための費用として

1081万6348円を管理しているところ,これは,

民法649条の規定する前払費用に当たるものと解される。

 

前払費用は,委任事務の処理のための費用に充てるものとして

交付されたものであるから,受任者が委任事務を処理するために

費用を支出するたびに当該費用に充当されることが予定されており,

受任者は,当該委任事務が終了した時に,

前払費用から支出した費用を差し引いた残金相当額を

委任者に返還すべきこととなる。

 

したがって,委任者の受任者に対する

上記前払費用についての返還請求権は,

当該委任事務の終了時に初めて

その債権額が確定するものというべきである。

 

そして,同請求権が委任者の債権者によって

差し押さえられた場合であっても,受任者は,

当該委任事務が終了しない限り,

委任事務の遂行を何ら妨げられるものではなく,

委任事務の処理のために費用を支出したときは,

委任者から交付を受けた前払費用を

これに充当することができるものと解される。

 

以上によれば,委任者の受任者に対する

前払費用についての返還請求権は,

当該委任事務の終了前においては,

その債権額を確定することができないのであるから,

民事執行法159条1項にいう券面額を有するものとはいえず,

転付命令の対象となる適格を有しないものと解すべきである。

 

本件債権は,上記前払費用についての返還請求権に当たるものであり,

抗告人がAから委任を受けた債務整理事務が終了していない以上,

転付命令の対象となる適格を有しないというべきである。

 

以上と異なる原審の判断には,

裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,

原決定は破棄を免れない。

 

そして,上記説示によれば,

原々決定中本件転付命令の申立てを認容した部分は

不当であるからこれを取り消し,同申立てを却下することとする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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