農業協同組合法39条2項,33条2項に基づく損害賠償責任

(平成21年11月27日最高裁)

事件番号  平成19(受)1503

 

(1) 監事は,理事の業務執行が適法に行われているか否かを

善良な管理者の注意義務(農業協同組合法39条1項,商法

〔平成17年法律第87号による改正前のもの。

以下「旧商法」という。〕254条3項,民法644条)をもって

監査すべきものであり(農業協同組合法39条2項,旧商法274条1項),

理事が組合の目的の範囲内にない行為その他法令若しくは

定款に違反する行為を行い,又は行うおそれがあると認めるときは,

理事会にこれを報告することを要し(農業協同組合法39条3項,

旧商法260条ノ3第2項),理事の上記行為により組合に

著しい損害を生ずるおそれがある場合には,

理事の行為の差止めを請求することもできる

(農業協同組合法39条2項,旧商法275条ノ2)。

 

監事は,上記職責を果たすため,理事会に出席し,

必要があるときは意見を述べることができるほか

(農業協同組合法39条3項,商法〔平成13年法律第149号による改正前のもの〕

260条ノ3第1項),いつでも組合の業務及び財産の状況の調査を行うことができる

(農業協同組合法39条2項,旧商法274条2項)。

 

そして,監事は,組合のため忠実に

その職務を遂行しなければならず(農業協同組合法39条2項,33条1項),

その任務を怠ったときは,組合に対して損害賠償責任を負う(同条2項)。

 

監事の上記職責は,たとえ組合において,

その代表理事が理事会の一任を取り付けて業務執行を決定し,

他の理事らがかかる代表理事の業務執行に深く関与せず,

また,監事も理事らの業務執行の監査を逐一行わないという

慣行が存在したとしても,そのような慣行自体適正なものとはいえないから,

これによって軽減されるものではない。

 

したがって,原審判示のような慣行があったとしても,

そのことをもって被上告人の職責を軽減する

事由とすることは許されないというべきである。

 

(2) 前記事実関係によれば,Aは,

平成13年1月25日開催の理事会において,

公的な補助金の交付を受けることにより上告人自身の資金的負担のない形で

堆肥センターの建設事業を進めることにつき承認を得たにもかかわらず,

同年8月31日開催の理事会においては,

補助金交付をB財団に働き掛けたなどと虚偽の報告をした上,

その後も補助金の交付が受けられる見込みがないにもかかわらず

これがあるかのように装い続け,平成14年5月には,

上告人に費用を負担させて用地を取得し,

堆肥センターの建設工事を進めたというのであって,

このようなAの行為は,明らかに上告人に対する

善管注意義務に反するものといえる。

 

そして,Aは,平成13年8月31日開催の理事会において,

補助金交付申請先につき,方向転換してB財団に働き掛けたなどと述べ,

それまでの説明には出ていなかった補助金の交付申請先に言及しながら,

それ以上に補助金交付申請先や申請内容に関する

具体的な説明をすることもなく,

補助金の受領見込みについてあいまいな説明に終始した上,

その後も,補助金が入らない限り,同事業には着手しない旨を

繰り返し述べていたにもかかわらず,

平成14年4月26日開催の理事会において,

補助金が受領できる見込みを明らかにすることもなく,

上告人自身の資金の立替えによる用地取得を提案し,

なし崩し的に堆肥センターの建設工事を実施に移したというのであって,

以上のようなAの一連の言動は,同人に明らかな

善管注意義務違反があることをうかがわせるに十分なものである。

 

そうであれば,被上告人は,上告人の監事として,

理事会に出席し,Aの上記のような説明では,

堆肥センターの建設事業が補助金の交付を受けることにより

上告人自身の資金的負担のない形で実行できるか否かについて

疑義があるとして,Aに対し,補助金の交付申請内容や

これが受領できる見込みに関する資料の提出を求めるなど,

堆肥センターの建設資金の調達方法について

調査,確認する義務があったというべきである。

 

しかるに,被上告人は,上記調査,確認を行うことなく,

Aによって堆肥センターの建設事業が

進められるのを放置したものであるから,

その任務を怠ったものとして,上告人に対し,

農業協同組合法39条2項,33条2項に基づく

損害賠償責任を負うものというほかはない。

 

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