退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求と権利の濫用

(平成21年12月18日最高裁)

事件番号  平成21(受)233

 

この裁判は、

株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された

退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが

信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした

原審の判断に違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

上告人に対し退職慰労金を支給する旨の

株主総会の決議等が存在しない以上は,

上告人には退職慰労金請求権が発生しておらず,

上告人が本件金員の支給を受けたことが

不当利得になることは否定し難いところである。

 

しかし,前記事実関係によれば,被上告人においては,

従前から,退任取締役に対する退職慰労金は,通常は,

事前の株主総会の決議を経ることなく,

上記2(4)記載の支給手続によって支給されており,

発行済株式総数の99%以上を

保有する代表者が決裁することによって,

株主総会の決議に代えてきたというのである。

 

そして,上告人が,弁護士を通じ,

平成18年3月2日付けの内容証明郵便をもって,

本件内規に基づく退職慰労金の支給をするよう催告をしたところ,

その約10日後に本件金員が送金され,

被上告人においてその返還を明確に求めたのは,

本件送金後1年近く経過した

平成19年2月21日であったというのであるから,

上告人が,本件送金の担当者と通謀していたというのであればともかく,

本件送金について被上告人代表者の決裁を

経たものと信じたとしても無理からぬものがある。

 

また,被上告人代表者が,上記催告を受けて本件送金がされたことを,

その直後に認識していたとの事実が認められるのであれば,

被上告人代表者において

本件送金を事実上黙認してきたとの評価を免れない。

 

さらに,上告人は,上告人が

従前退職慰労金を支給された退任取締役と

同等以上の業績を上げてきたとの事実も主張しており,

上記各事実を前提とすれば,上告人に対して

退職慰労金を不支給とすべき合理的な理由があるなど

特段の事情がない限り,被上告人が上告人に対して

本件金員の返還を請求することは,信義則に反し,

権利の濫用として許されないというべきである。

 

このことは,被上告人代表者が,上告人に対し,

本件内規に基づく退職慰労金を支給する旨の

意思表示をしたと認めるに足りず,

被上告人が民事再生手続開始の決定を

受けているとしても,異なるものではない。

 

そうすると,上記催告を受けて本件金員が送金されたことについての

被上告人代表者の認識や上告人の業績等の事実について審理判断せず,

上記特段の事情の有無についても審理判断しないまま,

被上告人代表者が本件内規に基づく退職慰労金を

支給する旨の意思表示をしたと認めるに足りず,

被上告人が民事再生手続開始の決定を受けていることのみを説示して,

本件請求が信義則に反せず,

権利の濫用に当たらないとした原審の判断には,

審理不尽の結果,法令の適用を誤った違法があるといわざるを得ず,

この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

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