運転免許取消処分取消請求事件

(平成18年7月21日最高裁)

事件番号  平成17(行ヒ)149

 

この裁判は、

信号機等により交通整理の行われていない交差点において

加害者の運転する自動車が自転車横断帯に接する

横断歩道上を横断中の被害者の運転する自転車に衝突して

被害者を負傷させた事故が

道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)

別表第1の2の表の適用に関し専ら加害者の

不注意によって発生したものとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係によれば,本件事故の際,

被害自転車が進行してきた方向から

被上告人車の進行してくる方向への

見通しを妨げるものは特にないのに,被害者は,

死角となっている進路右方の安全に気を取られて,

被上告人車の進行してくる方向を注視することなく

本件交差点に進入したというのである。

 

(2) しかし,前記事実関係によれば,本件交差点においては

信号機等による交通整理が行われていなかったところ,

被上告人側道路に一時停止の規制があったのであるから,

被上告人側道路の車両の通行よりも交差道路の

車両の通行が優先する関係にあったということができる。

 

さらに,車両等は,自転車横断帯に接近する場合には,

当該自転車横断帯を通過する際に当該自転車横断帯により

その進路の前方を横断しようとする自転車がないことが明らかな場合を除き,

当該自転車横断帯の直前で停止することが

できるような速度で進行しなければならず,

この場合において,自転車横断帯によりその進路の前方を横断し,

又は横断しようとする自転車があるときは,

当該自転車横断帯の直前で一時停止し,かつ,

その通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法38条1項)。

 

前記事実関係によれば,被害者は,本件事故の際,

自転車横断帯に接する横断歩道上を自転車に乗ったまま

横断していたものであるが,その横断していた所は,

自転車横断帯の北側表示線の中心からわずかに約0.8m離れた所で,かつ,

横断歩道上であることからすれば,被上告人において

被害自転車の通行を優先させて安全を確保すべき

前記義務を免れるものではないというべきである。

 

また,被上告人は,本件交差点に入ろうとし,

及び本件交差点内を通行するときは,

本件交差点の状況に応じ,交差道路を通行する車両等に特に注意し,かつ,

できる限り安全な速度と方法で

進行しなければならない(道路交通法36条4項)。

 

これらの自転車横断帯等における

自転車の安全を確保する義務や交差点安全進行義務は,

自動車運転者にとって交通事故を防止する上で

基本的なものであるということができるから,

被害者としては,被上告人がこれらの義務を遵守することを

十分に信頼することができる立場にあったというべきである。

 

そして,前記事実関係によれば,被上告人車が

進行してきた方向から被害自転車の進行してくる方向への

見通しを妨げるものは特になかったというのであるから,

被上告人は,被害自転車を発見し,衝突を回避することが

十分可能であったにもかかわらず,上記義務を怠り,

本件事故を発生させたというべきである。

 

(3) そうすると,令別表第1の2の表の適用に関し,

被害者が被上告人車に気が付かず,

その動静に注意しないまま横断歩道上を横断しようとしたことをもって,

被害者の不注意と評価すべきものではなく,

本件事故は,専ら被上告人の上記不注意によって

発生したものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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