運転者が認識していない後部荷台の同乗者を被害者とする業務上過失致死罪が成立するとされた事例
(平成元年3月14日最高裁)
事件番号 昭和61(あ)193
最高裁判所の見解
所論にかんがみ職権で判断するに、
一、二審判決の認定するところによると、被告人は、
業務として普通貨物自動車(軽四輪)を運転中、制限速度を守り、
ハンドル、ブレーキなどを的確に操作して
進行すべき業務上の注意義務を怠り、
最高速度が時速三〇キロメートルに指定されている道路を
時速約六五キロメートルの高速度で進行し、
対向してきた車両を認めて狼狽し、
ハンドルを左に急転把した過失により、
道路左側のガードレールに衝突しそうになり、
あわてて右に急転把し、自車の走行の自由を失わせて暴走させ、
道路左側に設置してある信号柱に
自車左側後部荷台を激突させ一その衝撃により、
後部荷台に同乗していたA及びBの両名を死亡するに至らせ、
更に助手席に同乗していたCに対し全治約二週間の傷害を負わせたものであるが、
被告人が自車の後部荷台に右両名が
乗車している事実を認識していたとは認定できないというのである。
しかし、被告人において、右のような無謀ともいうべき
自動車運転をすれば人の死傷を伴ういかなる事故を惹起するかもしれないことは、
当然認識しえたものというべきであるから、
たとえ被告人が自車の後部荷台に前記両名が
乗車している事実を認識していなかつたとしても、
右両名に関する業務上過失致死罪の成立を妨げないと解すべきであり、
これと同旨の原判断は正当である。
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