過払金返還債務の承継

(平成24年6月29日最高裁)

事件番号  平成24(受)539

 

この裁判は、

貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,

その顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る

債権をYに譲渡した場合において,

YがAのXに対する過払金返還債務を

承継したとはいえないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を

一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に

譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち

何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,

借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が

譲受業者に当然に移転するものではなく,また,

譲受業者が上記金銭消費貸借取引に

係る過払金返還債務を当然に承継するものでもない

(最高裁平成22年(受)第1238号,同年(オ)

第1187号同23年3月22日第三小法廷判決・

裁判集民事236号225頁,最高裁平成22年(受)

第1405号同23年7月8日第二小法廷判決・

裁判集民事237号159頁等)。前記事実関係によれば,

本件譲渡は,Aから被上告人への債権譲渡について

包括的に定めた本件債権譲渡基本契約に基づくものであるところ,

同基本契約には,契約上の地位の移転や過払金等返還債務の

当然承継を定める条項はないというのであるから,

本件譲渡により,直ちに,被上告人が,

第1取引に係る契約上の地位の移転を受け,

又は第1取引に係る過払金等返還債務を

承継したということはできない。

 

また,前記事実関係によれば,本件債権譲渡基本契約中の

本件債務引受条項は,譲渡債権に係るAの顧客を

第三者とする第三者のためにする契約の性質を有するところ,

本件変更契約の締結時までに,上告人は,被上告人に対し,

本件譲渡に係る通知に従い弁済をした以外には,

第1取引に係る約定残債権につき特段の行為をしておらず,

上記弁済をしたことをもって,本件債務引受条項に係る

受益の意思表示をしたものとみる余地はない。

 

そうすると,本件債務引受条項は,

上告人が受益の意思表示をする前にその効力を失ったこととなり,

被上告人が本件債務引受条項に基づき

上記過払金等返還債務を引き受けたということはできない。

 

最高裁平成23年(受)第516号同年9月30日第二小法廷判決・

裁判集民事237号655頁は,被上告人が,

本件業務提携契約を前提としてその完全子会社の顧客に対し

被上告人との間で金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結することを

勧誘するに当たって,顧客と上記完全子会社との間に生じた債権を全て承継し,

債務を全て引き受ける旨の意思表示をしたものと解するのが合理的であり,

顧客も上記の債権債務を被上告人において全てそのまま承継し,

又は引き受けることを前提に,上記勧誘に応ずる旨の

意思表示をしたものと解される場合につき判断したものであり,

上告人の意思を考慮することなくAと被上告人との間で

本件譲渡がされたにすぎない本件とは,

事案を異にすることが明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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