配当異議の訴え

(平成15年7月3日最高裁)

事件番号  平成14(受)1873

 

最高裁判所の見解

(1) 民事執行規則170条2号,4号の規定の趣旨が

競売手続の安定した遂行にあることは,

原審の判断(1)の指摘するとおりである。

 

また,被担保債権の一部のみの実行を申し立てた者は,

当該手続において申立てに係る債権の拡張を制限されても

やむを得ないということができる。

 

しかし,この結論は,当該申立債権者の選択を信頼した

競売手続の関係者に対する禁反言の要請から生ずるものであって,

上記各号の規定が被担保債権の一部実行の場合における

残部の優先弁済請求権の喪失という

実体法上の効果を定めるものではない。

 

(2) 不動産を目的とする担保権の実行としての競売の手続は,

所定の文書(民事執行法181条1項)が提出されたときに開始し,

当事者の申立てに係る事実を前提として進められるものであるから,

執行裁判所においては,民事執行規則170条2号,

4号の規定に従った記載がされるとの信頼の下に,

申立書の記載に従って手続を進行させることが

円滑な売却手続の実現に資するものということができる。

 

(3) しかし,抵当権の被担保債権の一部のみのためにする

担保権の実行としての競売においては,

売却により抵当権は消滅し,当該抵当権者は残部の被担保債権に対する

優先弁済請求権を喪失することとなり,

その効果は当該手続における配当にとどまらないから,

被担保債権の一部実行を申し立てる意思はなく,錯誤,誤記等に基づき

競売申立書に被担保債権の一部の記載をしなかった場合にまで,

一律に真実の権利主張を禁ずることが,

前記の禁反言からの当然の帰結ということはできず,

民事執行規則170条2号,4号の規定が

予定するところということもできない。

 

(4) したがって,訴訟手続である配当異議の訴えにおいて,

競売申立書における被担保債権の記載が

錯誤,誤記等に基づくものであること及び

真実の被担保債権の額が立証されたときは,

真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることが

できるものと解すべきである。

 

(5) 本件においては,上告人が提出した競売申立書には

本件根抵当権の元本債権の全額が記載されながら

附帯債権が存する旨の記載がなかったというのであるが,

この記載から,直ちに,上告人が附帯債権についての

優先弁済請求権を放棄し,元本についてのみの

実行の意思を表示したものと認めるには足りない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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