酒税法9条1項,酒税法10条11号,憲法22条1項

(平成10年7月16日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)97

 

最高裁判所の見解

(一) 本件処分当時の酒類販売業免許制の運用については、

酒税法一〇条各号該当性の具体的な判断の基礎となる内部基準として、

酒類販売業免許等取扱要領(平成元年六月一〇日付間酒三―二九五

「酒類の販売業免許等の取扱について」国税庁長官通達の別冊)及び

「一般酒類小売業免許の年度内一般免許枠の確定の基準について」

(平成元年六月一〇日付間酒三―二九六国税庁長官通達。

以下両通達を合わせて「平成元年取扱要領」という。)が設けられ、

これに従った運用が行われていた。

 

(二) 平成元年取扱要領は、従前適用されていた

酒類販売業免許等取扱要領(昭和三八年一月一四日付間酒二―二

「酒類の販売業免許等の取扱について」国税庁長官通達の別冊。

以下「昭和三八年取扱要領」という。)を全面的に改正したものである。

昭和三八年取扱要領は、酒税法一〇条一一号該当性の認定基準として、

小売販売地域内の酒類の総販売数量及び

総世帯数を基に計算した数値が別に定める小売基準数量又は

基準世帯数のいずれかを上回る場合に限り免許を付与し得ることとしながら、

そのただし書において、右要件に合致しても

免許を与えない場合があることを規定していた。

 

これに対し、平成元年取扱要領は、

昭和三八年取扱要領制定以降の社会経済の変化に即応し、

制度運営の透明性及び公平性を一層確保することを目的として、

次のとおり改正された。

 

すなわち、平成元年取扱要領は、

昭和三八年取扱要領における前記ただし書条項を全面的に削除するとともに、

酒税法一〇条一一号該当性の認定方法及びその基準として、

従前よりも広域の小売販売地域ごとに

地域の規模や人口密度による三段階の格付をし、

当該小売販売地域の人口を右段階ごとに分かれた

基準人口(A地域一五〇〇人、B地域一〇〇〇人、

C地域七五〇人)で除して得られる基準人口比率から既に

免許のある販売場の数を控除して、

新たに免許を付与し得る販売場数の計算値を求め、

これをおおむね五年で付与するため五で除するなどして、

当該小売販売地域の当該年度内の一般免許枠を確定し、

その枠内で免許を付与することを原則とし、

右免許枠以上の申請があるときは、

抽せんにより審査順位を定めることとした。

 

また、その例外的取扱いとして、

(1)右の基準人口を採用することが適当でないと認められる場合には、

国税庁長官に上申の上、二〇パーセントの枠内で

基準人口を変更することができ、

(2)新たに住居地域、商業地域等が造成される場合、

高層建築物が集積し昼間人口が住民登録人口に比べて

特に多い場合など所定の場合であって、

小売販売地域内の特定の地区又は場所において

特に一般酒類小売業免許を付与する必要があると認めるときは、

国税局長に上申して、特例免許指定地区を設けた上、

年度内特例免許枠を定めて免許を付与することができ、

(3)右以外の場合で、人口又は事務所の集中する地区又は

場所であって年度内特例免許枠を設けて免許を付与することが

合理的と判断されるときは、国税庁長官に上申して、

右と同様の措置を執るものとした。

 

(三) 平成元年取扱要領が小売販売地域を三段階に区分し、

それぞれの基準人口を前記のとおり定めたのは、

当時の各種統計資料に基づく酒類小売業者の経営実態を参酌したものである。

 

すなわち、昭和五二年から同六二年までの間の

一般酒類小売業の販売場数は緩やかに増加し、

その間の国民一人当たりのアルコール消費量、酒類消費金額の推移も

比較的緩やかな伸びにとどまっていたところ、

昭和六二年度における新規免許の付与例における

一販売場当たりの平均人口は、A地域が一五六七人、

B地域が一一二六人、C地域が八七八人であって、

同年度における一般酒類小売業者の酒類売上金額を

国民一人当たりの平均酒類消費金額で除して得られる人口は、

A地域が一五〇六人、B地域が一〇五〇人、C地域が六一二人であり、

平成元年取扱要領における基準人口は、

ほぼこれらの数値に適合するものであった。

 

(四) 被上告人は、平成元年取扱要領に

定められた認定基準に従って計算した結果、

上告人の申請に係る小売販売地域

(東京都台東区のうち浅草税務署管轄区域を除く地域)は、

A地域であって、基準人口たものとみることができる。

 

そして、酒類の消費量は、何よりも当該販売地域に居住する人口の大小によって

左右されるものと考えられるから、これを基準として需給の均衡を図ることは、

世帯数等を基準とするよりも合理的な認定方法ということができる。

 

したがって、平成元年取扱要領における酒税法一〇条一一号該当性の認定基準は、

当該申請に係る参入によって当該小売販売地域における酒類の供給が

過剰となる事態を生じさせるか否かを客観的かつ公正に認定するものであって、

合理性を有しているということができるので、

これに適合した処分は原則として適法というべきである。

 

もっとも、酒税法一〇条一一号の規定は、前記のとおり、

立法目的を達成するための手段として合理性を認め得るとはいえ、

申請者の人的、物的、資金的要素に欠陥があって

経営の基礎が薄弱と認められる場合にその参入を排除しようとする

同条一〇号の規定と比べれば、手段として間接的なものであることは

否定し難いところであるから、

酒類販売業の免許制が職業選択の自由に対する重大な

制約であることにかんがみると、同条一一号の規定を

拡大的に運用することは許されるべきではない。

 

したがって、平成元年取扱要領についても、

その原則的規定を機械的に適用さえすれば足りるものではなく、

事案に応じて、各種例外的取扱いの採用をも積極的に考慮し、

弾力的にこれを運用するよう努めるべきである。

 

3 これを本件についてみると、上告人の申請に係る

小売販売地域が事務所や商店の集中する昼間人口の多い地区であることは

公知の事実であるから 例外的取扱いの採否が問題とされるべきであるが、

他方、既に基準人口比率四五を著しく上回る数の販売場に

免許が付与されていることも考慮すると、

平成元年取扱要領に従ってされた本件処分に違法はないとした原審の判断は、

正当として是認することができる。

 

論旨は、違憲をいう点を含め、原審の認定に沿わない事実をまじえ、

独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、

採用することができない。

 

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