酒類販売業免許の申請と酒税法10条10号に該当する事由

(平成10年7月3日最高裁)

事件番号  平成6(行ツ)111

 

最高裁判所の見解

(一) 取扱要領は、免許を与えるのは小売基準数量要件又は

基準世帯数要件のいずれかを充足する場合に限ることとした上、

本件ただし書において、これらのいずれかを充足する場合でも、

酒類の需給均衡を破り、ひいては酒税の確保に支障を

来すおそれがあると認められる場合は免許を与えないものとする旨定めている。

 

前述したところによれば、右のような取扱要領の定め方が

同号の趣旨に沿うものであるかどうかには、

問題があるが、小売基準数量要件及び基準世帯数要件自体には、

相応の合理性があるものと考えられるから、

これらのいずれかを充足する場合、

とりわけ需給のバランスを直接的に示す小売基準数量要件を充足する場合には、

それでもなお酒類の需給均衡を破るおそれがあることが

具体的事実により客観的に根拠付けられて初めて、

同号に当たるということができるものと解するのが相当である。

 

本件ただし書きの定めは、極めて一般的抽象的であり、

運用指針としての意義に乏しいが、

右のような例外的な場合には免許を与えないことが

できることをいう趣旨に理解するほかはないものというべきである。

 

(二) 本件申請は、小売基準数量要件を充足し、

基準世帯数要件は満たさないものの、免許後一場当たり世帯数が

一八七世帯となるというのであるから、

基準世帯数である二〇〇世帯を大きく下回るものではない。

 

したがって、それでもなお酒類の需給均衡を破るおそれがあることが

具体的事実により客観的に根拠付けられない限り、

本件申請が法一〇条一一号に該当するとは断定し得ないものというべきである。

 

原審は、本件申請に係る小売販売地域における

酒類の消費量は頭打ちとなっており、

同販売地域の世帯数の推移も横ばいであること、

既存業者七者のうち四者は零細業者であって、

既存業者の経営状態は必ずしも良好とはいえないことなどから、

上告人に免許を与えることは酒類の需給の均衡を破るものと

被上告人が判断したことに合理性があるとしている。

 

しかし、本件処分時において小売基準数量要件を充足しており、

酒類の消費量や世帯数が今後大幅に減少するというのではないことからすれば、

特別の事情が認められない限り、今後も既存業者の経営は

おおむね成り立ち得ると推測される。

 

そして、零細とされる四者の販売数量は右地域における

小売基準数量を下回ってはいるものの、

取扱要領の定める小売基準数量は、

右地域と同様の市制施行の市街地(B地域)においては

二四キロリットルとされているが、

町制施行の市街地(C地域)においては、

その半分の一二キロリットルとされており、

その程度の販売数量でも十分経営が

成り立つものと想定されていること、

同様に取扱要領の定める基準世帯数は、

B地域においては二〇〇世帯であるが、

C地域においては一五〇世帯とされていること、

そもそも申請者をも加えた販売業者の

販売数量の平均値が小売基準数量を上回るという

小売基準数量要件を充足しても半数以上の

既存業者は小売基準数量を下回る可能性があるのであり、

そのことを根拠に需給の均衡が破れるというのであれば、

小売基準数量要件は意味をなさないことになること、

右の四者が酒類の販売以外に

いかなる営業をしているのかは明らかとされておらず、

その総体としての経営状況が良好ではないのか否かが

不明であることにかんがみれば、

原審の確定した事実のみをもって酒類の需給の均衡が破れるものと

即断することはできないものというのが相当である。

 

(三) 以上によれば、原審の確定した事実関係の下においては、

本件処分当時、本件申請が法一〇条一一号に該当すると

断定することはできないというべきである。

 

4 以上のとおりであるから、

原審の確定した事実関係の下において、

本件申請が法一〇条一〇号及び一一号に該当するとして

免許を拒否した本件処分に違法はないとした原審の判断には、

右各条項の解釈適用を誤る違法があり、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

したがって、その余の点につき判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、本件申請が法一〇条一一号に該当するか否かについては、

前記四者の総体としての経営状況等を含め、

本件申請が小売基準数量要件を充足するにもかかわらず、

なお酒類の需給均衡を破るおそれがあるというべき

具体的な事由があるかどうかにつき更に審理を尽くして

判断する必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。

 

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