金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺のため主張された自働債権の存否の判断の既判力

(平成6年11月22日最高裁)

事件番号  平成2(オ)1146

 

最高裁判所の見解

特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されている

いわゆる一部請求の事件において、

被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、

まず、当該債権の総額を確定し、その額から

自働債権の額を控除した残存額を算定した上、

原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときは

そのまま認容し、残存額を超えるときは

その残存額の限度でこれを認容すべきである。

 

けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、

その数量的な一部を少なくともその範囲においては

請求権が現存するとして請求するものであるので、

右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、

債権の総額からではなく、一部請求の額から

減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で

案分した額を控除して認容額を決することは、

一部請求を認める趣旨に反するからである。

 

そして、一部請求において、確定判決の既判力は、

当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には

及ばないとすること判例であり

(最高裁昭和三五年(オ)第三五九号同三七年八月一〇日

第二小法廷判決・民集一六巻八号一七二〇頁)、

相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、

請求の範囲に対して「相殺ヲ以テ対抗シタル額」に限られるから、

当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が

一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の

自働債権の存否については既判力を生じない。

 

したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、

被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された

相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、

まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を

控除した残存額が第一審で認容された

一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、

不利益変更禁止の原則に反するものではない。

 

そうすると、原審の適法に確定した事実関係の下において、

被上告人の請求債権の総額を第一審の認定額を超えて確定し、

その上で上告人が原審において新たに主張した

相殺の自働債権の額を請求債権の総額から控除し、

その残存額が第一審判決の認容額を超えるとして

上告人の控訴を棄却した原審の判断は、

正当として是認することができる。

原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 

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