銀行の頭取が信用保証協会の役員と共謀して同協会に対する背任罪

(平成16年9月10日最高裁)

事件番号  平成13(あ)347

 

 

最高裁判所の見解

(1) 原判決は,前記のとおり,被告人が,

平成8年度の協会に対する負担金の拠出に

応じないことを利用して,代位弁済を強く求めたとする。

 

記録によれば,負担金の問題については,次のような経緯がある。

平成6年度から5年計画で協会の基本財産を

10億5000万円増加させることとなり,

5年間で石川県が5億円,関係市町村が5000万円,

県内の金融機関が5億円を協会に拠出することとなった。

 

E銀行は,平成6年度に4200万円余,

平成7年度に4400万円余を拠出し,

平成8年度には4300万円余の拠出が求められていた。

 

金融機関の拠出額は,協会の保証を受けた債務の前年末の残高及び

過去1年間に受けた代位弁済額によって算定されることになっていた。

 

E銀行関係は,当時においては,協会の保証債務残高の約5割弱,

代位弁済額の約3割強ないし4割弱を占めており,

いずれの額においても断然第1位であった。

 

このような状況の下において,

独りE銀行のみが負担金の拠出を拒絶し,

協会から利益は受けるけれども,

応分の負担をすることは拒否するという態度を採ることが

実際上可能であったのか,ひいては,原審の認定のように,

被告人が協会に対する負担金の拠出に応じないことを

利用して代位弁済を強く求めることができたかどうか,

については疑問があるといわざるを得ない。

 

(2) E銀行が協会に対する平成8年度の負担金の拠出を拒絶することが

実際上も可能であり,かつ,協会側が被告人から

負担金の拠出に応じられない旨を告げられていたとしても,

協会としては,(ア) 本件代位弁済に応ずることにより,

E銀行の負担金の拠出を受け,

今後の基本財産増強計画を円滑に進めるべきか,

それとも,(イ) E銀行からの負担金を断念しても,

本件代位弁済を拒否すべきか,両者の利害得失を慎重に総合検討して,

態度を決定すべき立場にある。上記(ア)の立場を採ったとしても,

負担金の拠出を受けることと切り離し,本件代位弁済をすることが,

直ちに協会役員らの任務に背く行為に当たると速断することは,

できないはずである。

 

(3) 原判決は,本件では免責通知書に記載された事由すなわち

工場財団の対象となる機械166点のうち4点について,

登記手続が未了であったという事実以外にも免責事由が存したとして,

協会役員らが免責通知を撤回し代位弁済をした行為が

その任務に違背するものであった旨を詳細に判示しているが,

上記の登記手続が未了であったという事実以外の事実を

当時の被告人が認識していたことは確定していないのであるから,

そのような事実を直ちに被告人が行為の

任務違背性を認識していた根拠とすることはできない。

 

そして,記録によれば,上記の機械4点の登記漏れの事実が

8000万円の債務全額について

協会の保証責任を免責する事由となり得るかどうかについて,

議論があり得るところである。

 

また,原判決は,被告人の要求は事務担当者間の

実質的合意等を無視したものであるから

根拠のある正当な行為とはいえない旨を判示しているが,

事務担当者間の交渉結果につき役員による交渉によって

再検討を求めること自体が不当なものと評価されるべきものではない。

 

(4)これらの諸事情に照らせば,本件においては,

被告人が協会役員らと共謀の上,

協会に対する背任行為を実行したと認定するには,

少なからぬ合理的な疑いが残っているといわざるを得ない。

 

そうすると,原判決は,事実を誤認して

法律の解釈適用を誤った疑いがあり,

破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク