防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務

(平成17年9月16日最高裁)

事件番号  平成16(受)1847

 

この裁判では、

売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する

一切の事務を行っていた宅地建物取引業者に

専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき

買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1)ア 前記1の事実関係によれば,本件防火戸は,

火災に際し,防火設備の一つとして極めて重要な役割を

果たし得るものであることが明らかであるところ,

被上告人B不動産から委託を受けて

本件売買契約の締結手続をした被上告人B不動産販売は,

本件防火戸の電源スイッチが,一見してそれとは分かりにくい場所に

設置されていたにもかかわらず,D又は上告人に対して

何らの説明をせず,Dは,上記電源スイッチが切られた状態で

E号室の引渡しを受け,そのままの状態で居住を開始したため,

本件防火戸は,本件火災時に作動しなかったというのである。

 

イ また,記録によれば,(ア) 被上告人B不動産販売は,

被上告人B不動産による各種不動産の

販売等に関する代理業務等を行うために,

被上告人B不動産の全額出資の下に設立された会社であり,

被上告人B不動産から委託を受け,その販売する不動産について,

宅地建物取引業者として取引仲介業務を行うだけでなく,

被上告人B不動産に代わり,又は被上告人B不動産と共に,

購入希望者に対する勧誘,説明等から引渡しに至るまで販売に関する

一切の事務を行っていること,

(イ)被上告人B不動産販売は,

E号室についても,売主である被上告人B不動産から委託を受け,

本件売買契約の締結手続をしたにとどまらず,

Dに対する引渡しを含めた一切の販売に関する事務を行ったこと,

(ウ) Dは,上記のような被上告人B不動産販売の実績や専門性等を信頼し,

被上告人B不動産販売から説明等を受けた上で,

E号室を購入したことがうかがわれる。

 

ウ 上記アの事実関係に照らすと,被上告人B不動産には,

Dに対し,少なくとも,本件売買契約上の付随義務として,

上記電源スイッチの位置,操作方法等について

説明すべき義務があったと解されるところ,

上記イの事実関係が認められるものとすれば,

宅地建物取引業者である被上告人B不動産販売は,

その業務において密接な関係にある被上告人B不動産から委託を受け,

被上告人B不動産と一体となって,本件売買契約の締結手続のほか,

E号室の販売に関し,Dに対する引渡しを含めた一切の事務を行い,

Dにおいても,被上告人B不動産販売を

上記販売に係る事務を行う者として信頼した上で,

本件売買契約を締結してE号室の引渡しを

受けたこととなるのであるから,

このような事情の下においては,被上告人B不動産販売には,

信義則上,被上告人B不動産の上記義務と

同様の義務があったと解すべきであり,

その義務違反によりDが損害を被った場合には,

被上告人B不動産販売は,Dに対し,

不法行為による損害賠償義務を負うものというべきである。

 

そうすると,E号室の販売に関し,

被上告人B不動産販売が被上告人B不動産から受けた委託の趣旨及び

内容,被上告人B不動産販売の具体的な役割等について

十分に審理することなく,被上告人B不動産販売の上記義務を否定した

原審の判断には,審理不尽の結果,法令の適用を

誤った違法があるといわざるを得ない。

 

(2) 前記1の事実関係によれば,本件防火戸は,

本来,E号室内で火災が発生した場合には自動的に閉じて,

床,壁等と共に区画を区切り,出火した側の区画から

他の区画への延焼等を防止するようになっていたというのであるから,

本件南側区画の焼損,変色等による損傷は,

本件防火戸が作動していた場合には,消火活動等により

本件防火戸が開けられたとしても,

本件防火戸が作動しなかった場合に比べ,

その範囲が狭く,かつ,程度が軽かったことは明らかというべきである。

 

したがって,前者の場合における原状回復に要する費用の額は,

特段の事情がない限り,後者の場合における

原状回復に要する費用の額に比べて

低額にとどまると推認するのが相当である。

 

これについて,原審は,前者の場合であっても,

消火活動等により,ばい煙等が本件南側区画に出ることが

避けられなかったなどということから,

本件南側区画の天井及び壁の石膏ボード,空調設備,

家具等の交換が必要となることが考えられるとして,

後者の場合における損害の額が,前者の場合に比べて

高額になるとは認められないと認定しているが,

上記認定の前提とされた事情は,上記石膏ボード等の交換が

必要となる可能性があるとするものにすぎず,

上記特段の事情というには不十分であることが明らかである。

そうすると,原審の上記認定には,

経験則に違反する違法があるというべきである。

 

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