隣接地に下水管を敷設する工事の承諾及び当該工事の妨害禁止請求が権利の濫用に当たるとされた事例
(平成5年9月24日最高裁)
事件番号 平成3(オ)694
最高裁判所の見解
1 原審の確定した前記事実関係の下においては、
本件建物の汚水を公共下水道に流入させるには、
下水管を本件通路部分を経て本件私道にまで敷設し、
そこに埋設されている下水管に接続するのが
最も損害の少ない方法であると見られるので、
被上告人が上告人の所有する本件通路部分に
下水管を敷設する必要があることは否めない。
2 しかし、本件建物は、彼上告人が建築確認を受けることなく、
しかも特定行政庁の工事の施行の停止命令を無視して
建築した建築基準法に違反する建物であるというのであるから、
本件建物が除却命令の対象となることは明らかである。
このような場合には、本件建物につき、
被上告人において右の違法状態を解消させ、
確定的に本件建物が除却命令の対象とならなくなったなど、
本件建物が今後も存続し得る事情を明らかにしない限り
被上告人が上告人に対し、下水道法一一条一項、三項の規定に基づき
本件通路部分に下水管を敷設することについて受忍を求めることは、
権利の濫用に当たるものというべきである。
ところが、被上告人は、本件訴訟提起の前後を通じ、
右の事情を何ら明らかにしていない。
3 そうとすると、本件建物が今後も存続することが
できることが明らかでない段階における本件請求は、
権利の濫用として許されないというべきである。
これと異なる原審の判断には、
法令の解釈適用を誤った違法があるというほかなく、
その違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
そして、以上説示したところによれば、被上告人の請求を
棄却した第一審判決は、その結論において正当であるから、
被上告人の控訴は理由がなく、これを棄却すべきものである。
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