非訟事件手続法19条1項所定の非訟事件の裁判を取り消す裁判に対する抗告

(平成16年12月16日最高裁)

事件番号  平成16(許)20

 

最高裁判所の見解

原々決定は,法19条1項の規定に基づく取消しの裁判であって,

法207条3項に規定する過料の裁判に当たるものではないところ,

法19条1項所定の非訟事件の裁判を取り消す裁判について,

抗告を禁ずるとの規定がなく,かつ,即時抗告によるとする規定もない以上,

同裁判に対しては通常抗告をすることが

できるものと解するのが相当である(法20条1項)。

 

したがって,原審の上記判断には,裁判に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反がある。

 

更に進んで,原々審の判断の当否について検討する。

即時抗告に服する非訟事件の裁判は,

法19条1項の規定による取消し及び

変更をすることができないこと(同条3項),

通常抗告に服する非訟事件の裁判についても,

抗告により上級審の判断がされた場合には,

同条1項による取消し及び変更の余地がないことに照らして,

非訟事件の裁判が確定したときには,同項による取消し及び

変更をすることができないものと解するのが相当である。

 

しかしながら,非訟事件の裁判は,

法律上の実体的権利義務の存否を終局的に

確定する民事訴訟事件の裁判とは異なり,

裁判所が実体的権利義務の存在を前提として

合目的な裁量によってその具体的内容を定めたり,

私法秩序の安定を期して秩序罰たる過料の制裁を科するなどの

民事上の後見的な作用を行うものである

(最高裁昭和36年(ク)第419号同40年6月30日

大法廷決定・民集19巻4号1089頁,最高裁昭和37年(ク)第243号

同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁,

最高裁昭和37年(ク)第64号同41年12月27日大法廷決定・

民集20巻10号2279頁参照)。

 

このような非訟事件の裁判の本質に照らすと,

裁判の当時存在し,これが裁判所に認識されていたならば

当該裁判がされなかったであろうと認められる事情の存在が,

裁判の確定後に判明し,かつ,当該裁判が不当であって

これを維持することが著しく正義に反することが明らかな場合には,

当該裁判を行った裁判所は,職権により同裁判を取り消し又は

変更することができるものと解すべきである。

 

本件においては,前記1のとおり,

確定した法208条ノ2に規定する過料の裁判である

本件第1裁判が存在したにもかかわらず,その存在が看過され,

同一事由について本件第2裁判がされたものであるから,

本件第2裁判は不当であってこれを維持することが著しく

正義に反することが明らかであり,

本件第2裁判を取り消すことができるものというべきである。

 

したがって,職権により本件第2裁判を取り消した原々決定は,

結論において是認することができる。

 

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