預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効と会員権の消長

(平成7年9月5日最高裁)

事件番号  平成3(オ)771

 

最高裁判所の見解

原審の確定した事実関係によれば、

被上告人の有する本件ゴルフクラブの個人正会員としての地位は、

いわゆる預託金会員組織のゴルフ会員権に該当する債権的契約関係であり、

その内容として、会員は、ゴルフクラブ会則に従って

ゴルフ場施設を利用し得る権利を有するとともに

年会費納入等の義務を負担し、また、入会の際に預託した

預託金を会則に定める据置期間の経過後に退会に伴って

返還請求することができるというのである。

 

これによれば、右契約関係においては、

会員のゴルフ場施設利用権が

その基本的な部分を構成するものであるところ、

会員は、ゴルフクラブの会員としての資格を有している限り、

会則に従ってゴルフ場施設を利用することができ、

上告会社は、会員に対してゴルフ場施設を利用可能な状態に保持し、

会則に従ってこれを利用させる義務を負うものというべきである。

 

そうだとすれば、会員がゴルフ場施設の

利用をしない状態が継続したとしても、

そのことのみによっては会員のゴルフ場施設利用権について

消滅時効は進行せず、契約関係に基づく包括的権利としての

ゴルフ会員権が消滅することはないが、

上告会社が会員に対して除名等を理由に

その資格を否定してゴルフ場施設の利用を拒絶し、

あるいはゴルフ場施設を閉鎖して会員による

利用を不可能な状態としたようなときは、

その時点から会員のゴルフ場施設利用権について

消滅時効が進行し、右権利が時効により消滅すると、

ゴルフ会員権は、その基本的な部分を構成する権利が

失われることにより、もはや包括的権利としては

存続し得ないものと解するのが相当である。

 

けだし、上告会社において会員の資格を否定することなく、

ゴルフ場施設を会員による利用が可能な状態に保持している場合には、

上告会社は会員に対し契約に基づく債務の履行をし、

会員は右債務の履行を受けているものというべきであるから、

そのような状態の下においては、

会員のゴルフ場施設利用権について消滅時効が進行する余地はないが、

上告会社が会員の資格を否定してゴルフ場施設の利用を拒絶し、

あるいは会員によるゴルフ場施設の利用を

不可能な状態としたようなときは、

上告会社による前記債務の履行状態が消滅し、

会員の上告会社に対する権利の行使を妨げるべき

事実が生じたものということができ、

その時点から消滅時効が進行するもの(民法二九一条参照)と

解すべきだからである。

 

したがって、右に判示したような点について検討することなく、

被上告人の個人正会員の地位それ自体が

消滅時効にかかることはあり得ないとして

上告会社の消滅時効の抗弁を排斥した原審の判断には、

法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、

理由不備の違法があり、その違法は原判決の結論に

影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、

その余の論旨について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、本件については、右の点につき更に

審理を尽くさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すのが相当である。

 

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