館山の放火殺人等事件

(平成22年9月16日最高裁)

事件番号  平成18(あ)2151

 

最高裁判所の見解

本件は,被告人が,(1) 自己の経済的な苦境や勤務先に対する

不満や悩みなどによるうっぷんを晴らすため,

平成10年2月11日午前4時40分ころ,

現住建造物を非現住建造物と誤信して放火し,

同建物の一部及び物置を焼損させた非現住建造物等放火の事案,

(2) 上記(1)の犯行により建物内で就寝していた1名が焼死したことを知り,

罪悪感から放火行為をしばらくやめていたものの,

平成15年9月18日午前2時30分ころ,

前日夜にスナックで男性客からば倒されたことに対する怒りや,

自己の経済的苦境等に対する不満や悩みなどによるうっぷんを晴らすため,

現住建造物2棟を全焼させて焼損した現住建造物等放火の事案,

(3) 同年12月18日午前3時15分ころ,

収入の減少や消費者金融からの督促等によるうっぷんを晴らすため,

民家に放火してそれを含む現住建造物等7棟を全焼させて焼損した上,

同民家において就寝中の家人4名を焼死させて殺害した

現住建造物等放火,殺人の事案,(4) 同日午前3時25分ころ,

ホテル浴場の保温チューブに放火しこれを損壊した器物損壊の事案,

(5) 同日午前3時45分ころ,スーパーマーケットの

建物の一部を焼損した非現住建造物等放火の事案,

(6) 同日午前4時5分ころ,民家に放火しようとしたが,

未遂に終わった現住建造物等放火未遂の事案,

(7) 同日午前4時10分ころ,

民家の一部を焼損した現住建造物等放火の事案である。

 

被告人は,経済的苦境等に対する

不満や悩みなどによるうっぷんを晴らすため,

放火のスリルと快感を求めて無差別に火を付け,

他人の生命や財産を奪うことも何ら意に介さず本件各犯行に及んでおり,

その犯行動機に酌むべき点はない。本件各犯行は,

深夜,建物密集地等で無差別に

火を放ったという危険極まりないものである。

 

被告人は,(1)の放火により焼死者1名を出すなどし,

放火が重大な結果を招く危険のあることを十分認識したにもかかわらず,

やがて罪悪感が薄れるにつれて,

(2)ないし(7)の無差別の連続放火を敢行したものである。

 

取り分け,(3)の犯行については,民家等が立ち並ぶ住宅街で,

犯行当時は相当強い浜風が吹くなどしていたことから,

放火して建物に火が燃え移れば折からの浜風にあおられて

急速に燃え広がり就寝中の家人が逃げ遅れて

焼死する高い可能性があることを十分認識しながら,

あえて放火行為に及んだものであって,

人の生命を軽視した極めて危険かつ悪質な犯行といえる。

 

4名もの尊い生命を奪った結果は,極めて重大であり,

遺族らの処罰感情はしゅん烈である上,

本件各犯行による財産的被害も大きく,店舗,住居等を失った

建物所有者,店舗経営者らの処罰感情も厳しい。

 

本件各犯行は,無差別放火事件であって,

このような犯行が地域社会に与えた不安や恐怖は大きい。

 

以上のような事情に照らすと,被告人の刑事責任は,

極めて重大であるといわざるを得ず,

殺意は未必的なものに止まること,捜査段階においては,

事実を認め,詳細な供述を積極的,自発的に行い,

真しに反省しようとする態度が認められたこと,

罰金以外に前科がないことなど,

被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,

原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,

当裁判所もこれを是認せざるを得ない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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