信義則上の情報提供義務

(平成24年11月27日最高裁)

事件番号  平成23(受)1400

 

この裁判は、

金融機関Yをいわゆるアレンジャーとするシンジケートローンへの

参加の招へいに応じた金融機関Xらに対しYが

信義則上の情報提供義務を負うとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,本件情報は,AのメインバンクであるCが,

Aの平成19年3月期決算書の内容に単に疑念を抱いたというにとどまらず,

Aに対し,外部専門業者による決算書の精査を強く指示した上,

その旨を別件シ・ローンの参加金融機関にも

周知させたというものである。

 

このような本件情報は,Aの信用力についての

判断に重大な影響を与えるものであって,

本来,借主となるA自身が貸主となる

被上告人らに対して明らかにすべきであり,

被上告人らが本件シ・ローン参加前にこれを知れば,

その参加を取り止めるか,少なくとも上記精査の結果を待つことにするのが

通常の対応であるということができ,その対応をとっていたならば,

本件シ・ローンを実行したことによる

損害を被ることもなかったものと解される。

 

他方,本件情報は,別件シ・ローンに関与していない

被上告人らが自ら知ることは通常期待し得ないものであるところ,

前記事実関係によれば,Bは,本件シ・ローンのアレンジャーである

上告人ないしその担当者のEに本件シ・ローンの組成・

実行手続の継続に係る判断を委ねる趣旨で,

本件情報をEに告げたというのである。

 

これらの事実に照らせば,アレンジャーである

上告人から本件シ・ローンの説明と参加の招へいを

受けた被上告人らとしては,上告人から交付された資料の中に,

資料に含まれる情報の正確性・真実性について上告人は

一切の責任を負わず,招へい先金融機関で独自に

Aの信用力等の審査を行う必要があることなどが

記載されていたものがあるとしても,

上告人がアレンジャー業務の遂行過程で入手した本件情報については,

これが被上告人らに提供されるように対応することを期待するのが当然といえ,

被上告人らに対し本件シ・ローンへの参加を招へいした

上告人としても,そのような対応が必要であることに

容易に思い至るべきものといえる。

 

また,この場合において,

上告人が被上告人らに直接本件情報を提供したとしても,

本件の事実関係の下では,上告人のAに対する

守秘義務違反が問題となるものとはいえず,

他に上告人による本件情報の提供に何らかの支障があることもうかがわれない。

 

そうすると,本件シ・ローンのアレンジャーである上告人は,

本件シ・ローンへの参加を招へいした被上告人らに対し,

信義則上,本件シ・ローン組成・実行前に

本件情報を提供すべき注意義務を負うものと解するのが相当である。

 

そして,上告人は,この義務に違反して

本件情報を被上告人らに提供しなかったのであるから,

被上告人らに対する不法行為責任が認められるというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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