刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠

(平成19年12月25日最高裁)

事件番号  平成19(し)424

 

この裁判では、

刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,

検察官が現に保管している証拠に限られるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

公判前整理手続及び期日間整理手続における証拠開示制度は,

争点整理と証拠調べを有効かつ効率的に行うためのものであり,

このような証拠開示制度の趣旨にかんがみれば,

刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,

必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,

当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,

公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において

入手が容易なものを含むと解するのが相当である。

 

(2) 公務員がその職務の過程で作成するメモについては,

専ら自己が使用するために作成したもので,

他に見せたり提出することを全く想定していないものがあることは

所論のとおりであり,これを証拠開示命令の対象とするのが

相当でないことも所論のとおりである。

 

しかしながら,犯罪捜査規範13条は,

「警察官は,捜査を行うに当り,

当該事件の公判の審理に証人として

出頭する場合を考慮し,および将来の捜査に資するため,

その経過その他参考となるべき事項を

明細に記録しておかなければならない。」

と規定しており,警察官が被疑者の取調べを行った場合には,

同条により備忘録を作成し,

これを保管しておくべきものとしているのであるから,

取調警察官が,同条に基づき作成した備忘録であって,

取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,

捜査機関において保管されている書面は,

個人的メモの域を超え,捜査関係の公文書ということができる。

 

これに該当する備忘録については,

当該事件の公判審理において,

当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,

証拠開示の対象となり得るものと解するのが相当である。

 

(3) 原決定は,備忘録の証拠開示について,

その必要性・相当性について具体的な判断をしていないが,

これは,原審が備忘録も開示の対象となり得ることを前提に,

検察官にその存否を明らかにし,

開示による弊害についても具体的に主張するよう求めたのに対し,

検察官が,そもそも備忘録は開示の対象とならないとの見解の下に,

その求めに応じなかったことによるものであり,

このような経過にかんがみると,

原審の措置をもって違法ということはできない。

 

なお,原決定は,主文において

「被告人の取調べに係るA警部補作成の取調べメモ(手控え),

備忘録等」の開示を命じているが,これは取調官であるAが,

犯罪捜査規範13条の規定に基づき,被告人の取調べについて

その供述内容や取調べの状況等を記録した備忘録であって,

捜査機関において保管中のものの開示を命じたものと解することができ,

このように解すれば原決定を是認することができる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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