労働組合法上の労働者

(平成24年2月21日最高裁)

事件番号  平成22(行ヒ)489

 

この裁判は、

音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結して

顧客宅等での出張修理業務に従事する受託者につき,

上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした

原審の判断に違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係等によれば,C製品に係る出張修理業務のうち

被上告人の従業員によって行われる部分は

一部であって,被上告人は,自ら選抜し,約3か月間の

被上告人が実施する研修を了した個人代行店に

出張修理業務のうち多くの割合の業務を担当させている上,

個人代行店が担当する各営業日ごとの出張修理業務については,

被上告人が1日当たりの受注可能件数を原則8件と定め,

各個人代行店とその営業日及び業務担当地域ごとの業務量を

調整して割り振っているというのであるから,

個人代行店は,被上告人の上記事業の遂行に必要な労働力として,

基本的にその恒常的な確保のために被上告人の組織に

組み入れられているものとみることができる。

 

加えて,本件契約の内容は,被上告人の作成した

統一書式に基づく業務委託に関する契約書及び覚書によって

画一的に定められており,業務の内容やその条件等について

個人代行店の側で個別に交渉する余地がないことは明らかであるから,

被上告人が個人代行店との間の契約内容を

一方的に決定しているものといえる。

 

さらに,個人代行店に支払われる委託料は,

原則として被上告人が定めた修理工料等に一定割合を乗じて算定されるなど,

形式的には出来高払に類する方式が採られているものの,

個人代行店は1日当たり通常5件ないし

8件の出張修理業務を行い,その最終の顧客訪問時間は

午後6時ないし7時頃になることが多いというのであるから,

このような実際の業務遂行の状況に鑑みると,

修理工料等が修理する機器や修理内容に応じて

著しく異なることからこれを専ら仕事完成に対する

対価とみざるを得ないといった事情が特段うかがわれない本件においては,

実質的には労務の提供の対価としての性質を

有するものとして支払われているとみるのがより実態に

即しているものといえる。

 

また,個人代行店は,特別な事情のない限り被上告人によって

割り振られた出張修理業務を全て受注すべきものとされている上,

本件契約の存続期間は1年間で被上告人から

申出があれば更新されないものとされていること等にも照らすと,

個人代行店があらかじめその営業日,業務時間及び受注可能件数を提示し,

被上告人がこれに合わせて顧客から受注した

出張修理業務を発注していることを考慮しても,

各当事者の認識や本件契約の実際の運用においては,

個人代行店は,なお基本的に被上告人による

個別の出張修理業務の依頼に応ずべき関係に

あるものとみるのが相当である。

 

しかも,個人代行店は,原則として営業日には

毎朝業務開始前に被上告人のサービスセンターに出向いて

顧客訪問予定日時等の記載された出張訪問カードを受け取り,

被上告人の指定した業務担当地域に所在する顧客宅に順次赴き,

C作成のサービスマニュアルに従って所定の出張修理業務を行うのであり,

その際には,被上告人の親会社である

Cのロゴマーク入りの制服及び名札を着用した上,

被上告人の社名が印刷された名刺を携行し,毎夕の業務終了後も

原則としてサービスセンターに戻り,

伝票処理や当日の修理進捗状況等の入力作業を行っているというのであるから,

上記のような通常の業務に費やされる時間及びその態様をも考慮すれば,

個人代行店は,基本的に,被上告人の指定する業務遂行方法に従い,

その指揮監督の下に労務の提供を行っており,かつ,

その業務について場所的にも時間的にも

相応の拘束を受けているものということができる

(このことは,サービスセンターとのやり取りを

ファックス等を通じた通信により行っている

一部の個人代行店についても同様である。)。

 

(2) 上記(1)の諸事情に鑑みると,本件における

出張修理業務を行う個人代行店については,

他社製品の修理業務の受注割合,修理業務における従業員の関与の態様,

法人等代行店の業務やその契約内容との等質性などにおいて,

なお独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り,

労働組合法上の労働者としての性質を肯定すべきものと解するのが相当であり,

上記個人代行店について上記特段の事情があるか否かが問題となる。

 

しかしながら,C製品以外の製品の修理業務を行う

個人代行店が2店存在する一方で,

その業務の内容や割合等は明らかではなく,また,

個人代行店はその従業員を修理業務に従事させることが

禁止されていないものの,その従業員の有無及び

その従業員が行っている業務の内容が日常的に

補助的業務の範囲を超えているか否か等は明らかではなく,

さらに,被上告人は法人等代行店とも業務委託契約を締結しているところ,

法人等代行店の業務の実態やその契約の内容等の詳細は明らかではない。

 

このように,前記事実関係等のみからは,

個人代行店が自らの独立した経営判断に基づいて

その業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として

確保されているか否かは必ずしも明らかであるとはいえず,

出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての

実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で

必要な上記の諸点についての審理が十分に

尽くされていないものといわざるを得ない。

 

なお,個人代行店は,出張業務に際して自ら保有する自動車を用い,

その諸費用を自ら負担しているが,一方で高価で

特殊な計測機器等については被上告人から無償で

貸与されているなどの事実にも鑑みれば,

それだけでは上記のような機会が確保されていると

認めるには足りないというべきである。

 

また,個人代行店が被上告人から支払われる委託料から

源泉徴収や社会保険料等の控除を受けておらず,

自ら確定申告を行っている点についても,

実態に即して客観的に決せられるべき労働組合法上の労働者としての性質が

そのような事情によって直ちに左右されるものとはいえない。

 

5 以上によれば,前記4(1)の諸事情があるにもかかわらず,

出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての

実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で

必要な上記の諸点について十分に審理を尽くすことなく,

上記個人代行店は被上告人との関係において

労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

 

そこで,前記4(1)の諸事情がある以上,

出張修理業務を行う個人代行店は独立の事業者としての

実態を備えていると認めるべき特段の事情のない限り

被上告人との関係において労働組合法上の労働者に当たると

解すべきであることを前提とした上で,

参加人らに加入する個人代行店の修理業務の内容,

当該個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると

認めるべき特段の事情があるか否か,

仮に当該個人代行店が労働組合法上の労働者に当たると

解される場合において被上告人が本件要求事項に係る

団体交渉の申入れに応じなかったことが

不当労働行為に当たるか否か等の点について

更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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