国税徴収法39条所定の第二次納税義務者が本来の納税義務者に対する課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立て

(平成18年1月19日最高裁)

事件番号  平成16(行ヒ)275

 

最高裁判所の見解

(1) 国税徴収法 39 条は,滞納者である本来の納税義務者が,

その国税の法定納期限の 1 年前の日以後にその財産について無償又は

著しく低い額の対価による譲渡,債務の免除

その他第三者に利益を与える処分を行ったために,

本来の納税義務者に対して滞納処分を執行しても

なお徴収すべき額に不足すると認められるときは,

これらの処分により権利を取得し,又は義務を免れた第三者に対し,

これらの処分により受けた利益が現に存する限度において,

本来の納税義務者の滞納に係る国税の第二次納税義務を課している。

 

同条に定める第二次納税義務は,本来の納税義務者に対する

主たる課税処分等によって確定した主たる納税義務の税額につき

本来の納税義務者に対して滞納処分を執行してもなお

徴収すべき額に不足すると認められる場合に,

前記のような関係にある第三者に対して補充的に課される義務であって,

主たる納税義務が主たる課税処分によって確定されるときには,

第二次納税義務の基本的内容は主たる課税処分において定められるのであり,

違法な主たる課税処分によって主たる納税義務の税額が過大に確定されれば,

本来の納税義務者からの徴収不足額は当然に大きくなり,

第二次納税義務の範囲も過大となって,

第二次納税義務者は直接具体的な不利益を被るおそれがある。

 

他方,主たる課税処分の全部又は一部が

その違法を理由に取り消されれば,

本来の納税義務者からの徴収不足額が消滅し又は減少することになり,

第二次納税義務は消滅するか又はその額が減少し得る関係にあるのであるから,

第二次納税義務者は,主たる課税処分により自己の権利若しくは

法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり,

その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益を有するというべきである。

 

そうすると,国税徴収法 39 条所定の第二次納税義務者は,

主たる課税処分につき国税通則法 75 条に基づく

不服申立てをすることができるものと解するのが相当である。

 

確かに,一般的,抽象的にいえば,

国税徴収法上第二次納税義務者として

予定されるのは,本来の納税義務者と同一の

納税上の責任を負わせても公平を失しないような

特別な関係にある者であるということができるが,

その関係には種々の態様があるのであるし,

納付告知によって自ら独立した納税義務を負うことになる

第二次納税義務者の人的独立性を,

すべての場面において完全に否定し去ることは相当ではない。

 

特に,本件で問題となっては,本来の納税義務者から無償又は

著しく低い額の対価による財産譲渡等を受けたという取引相手にとどまり,

常に本来の納税義務者と一体性又は

親近性のある関係にあるということはできないのであって,

譲渡等による利益を受けていることをもって,

当然に,本来の納税義務者との一体性を肯定して両者を

同一に取り扱うことが合理的であるということはできない。

 

また,第二次納税義務が成立する場合の本来の納税義務者は,

滞納者であるから,自己に対する主たる課税処分に瑕疵があり,

これに不服があるとしても,必ずしも時間や費用の負担をしてまで

主たる課税処分に対する不服申立て等の争訟に及ぶとは限らないのであり,

本来の納税義務者によって第二次納税義務者の訴権が

十分に代理されているとみることは困難である。

 

なお,主たる納税義務が申告によって確定する場合には,

第二次納税義務者が本来の納税義務者の申告自体を

直接争う方法はないのであるが,そのことから逆に,

行政権の違法な行使によって権利利益の侵害が生ずる場合にまで,

これを争う方法を否定する結論を導くべきであるとは考えられない。

 

(2) 第二次納税義務は,本来の納税義務者に対して

滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められるときに,

初めて,その義務が成立するものであり,主たる課税処分の時点では,

上記のような第二次納税義務が成立する要件が

充足されるかどうかが未確定であることも多い。

 

したがって,本来の納税義務者以外の第三者が

そのような段階で主たる課税処分の存在を知ったとしても,

当該第三者において,それが

自己の法律上の地位に変動を及ぼすべきものかどうかを

認識し得る状態にはないといわざるを得ない。

 

他方,第二次納税義務者となる者に主たる課税処分に対する

不服申立ての適格を肯定し得るのは,納付告知を受けて

第二次納税義務者であることが確定したか,

又は少なくとも第二次納税義務者として納付告知を

受けることが確実となったと客観的に

認識し得る時点からであると解される。

 

そうであるのに,不服申立ての適格を肯定し得ない段階で,

その者について不服申立期間が

進行していくというのは背理というべきである。

 

殊に国税徴収法 39 条所定の第二次納税義務者は,前記のとおり,

本来の納税義務者から無償又は著しく低い額の対価による

財産譲渡等を受けたという取引相手にとどまり,

常に本来の納税義務者と一体性又は

親近性のある関係にあるということはできないのであって,

第二次納税義務を確定させる納付告知があるまでは,

不服申立ての適格があることを確実に

認識することはできないといわざるを得ない。

 

その反面,納付告知があれば,それによって,

主たる課税処分の存在及び第二次納税義務が成立していることを

確実に認識することになるのであって,

少なくともその時点では明確に「処分があったことを知った」ということができる。

 

そうすると,国税徴収法 39 条所定の第二次納税義務者が

主たる課税処分に対する不服申立てをする場合,

国税通則法 77 条 1 項所定の「処分があったことを知った日」とは,

当該第二次納税義務者に対する納付告知(納付通知書の送達)がされた日をいい,

不服申立期間の起算日は納付告知が

された日の翌日であると解するのが相当である。

 

以上によれば,上告人は,本件課税処分につき

国税通則法 75 条 1 項所定の不服申立ての適格を有するところ,

平成 14 年 6 月 8 日に同月 7 日付けの東京国税局長による

納付通知書の送達を受け,同年 8 月 6 日に

本件異議申立てを行っているのであるから,

本件異議申立ては同法 77 条 1 項所定の

不服申立期間内にされた適法なものであり,

本件審査請求が適法な異議申立てを

経ていないことを理由としてこれを却下した本件裁決は,

取り消されるべきである。

 

そうすると,上告人の不服申立ての適格を否定して

本件異議申立てを不適法とし,本件裁決を適法とした原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク