少年法8条,少年法14条,少年法32条,少年法33条2項,少年法35条

(平成20年7月11日最高裁)

事件番号  平成20(し)147

 

この裁判は、

強盗致傷の非行事実を認定して少年を

中等少年院送致とした家庭裁判所の決定が,

抗告審で事実誤認を理由に取り消されて差し戻された場合において,

検察官の申し出た証拠を取り調べずに,非行なしとして

少年を保護処分に付さなかった受差戻審の決定に

法令違反はないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

少年の再抗告事件において,

原決定に少年法35条1項所定の事由が認められない場合でも,

同法32条所定の事由があって,

これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるときは,

職権により原決定を取り消すことができると解される

(最高裁昭和58年(し)第30号同年9月5日第三小法廷決定・

刑集37巻7号901頁参照)。

 

そこで検討すると,第1次抗告審決定は,

第1次家裁決定が非行事実認定の主たる証拠とした

少年の自白,Cの自白及びDの自白の信用性をいずれも否定し,

同決定には重大な事実の誤認の疑いがあるとして,

これを取り消したものであり,

受差戻審に更なる証拠調べを求めたものではない。

 

そして,第1次抗告審決定は,被害者の供述をも根拠として,

実行犯の中にBのように明らかに大柄な人物がいるとみることには

合理的な疑いが残るとしたものであること,同決定は,

このほかにも,Dにアリバイが成立する可能性が高いことなど種々の点を指摘して

上記各自白の信用性に疑問があるとしたものであること,

第1次審判において,少年の取調べ警察官の証人尋問が行われ,

同警察官及びCの取調べ警察官の証人尋問調書(A及びBの1審公判におけるもの)

も取調べ済みであったこと,第1次抗告審においては,

検察官が本件DVDの取調べを申し出たのと同一の趣旨で提出した

本件DVDの映像を写真化した証拠及びこれを説明した

鑑識課警察官の供述調書が取り調べられていたことなどにかんがみると,

第2次抗告審決定がいうように,本件DVD等を取り調べることによって,

第1次抗告審決定の結論が覆る蓋然性があったとも認められない。

 

以上に加え,本件の審理経過や早期,迅速な処理が要請される

少年保護事件の特質をも考慮すると,

第1次抗告審決定を受けた受差戻審が,

検察官が取調べを申し出た本件DVD等を取り調べなかった措置は,

合理的な裁量の範囲内のものと認められる

(最高裁昭和58年(し)第77号同年10月26日

第一小法廷決定・刑集37巻8号1260頁参照)。

 

そして,受差戻審は,新たな証拠調べを行わない以上,

第1次抗告審決定が示した消極的否定的判断に拘束されることとなるから

(最高裁昭和41年(あ)第108号同43年10月25日

第二小法廷判決・刑集22巻11号961頁参照),

 

その旨判示し,非行なしとして少年を保護処分に

付さなかった第2次家裁決定に法令違反は認められず,

また,記録を調べても,同決定に事実誤認も認められない。

 

同決定に,決定に影響を及ぼす法令違反があるとして

これを取り消した原決定には重大な法令違反があり,

これを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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