損失保証契約の効力

(平成9年9月4日最高裁)

事件番号  平成5(オ)2142

 

最高裁判所の見解

証券会社側が特定の株式の価格が騰貴する旨の断定的判断を提供することと、

証券会社側と顧客とが株式の価格が下落した場合には

損失を補てんする旨の損失保証の合意をすることとは、

株式買付けの動機を形成する面において相互に排斥し合う関係にはなく、

かえって、本件における原審確定事実のように、

証券会社側の顧客に対する一連の株式買付けの勧誘の過程において、

証券会社側が断定的判断の提供による勧誘をし、

右勧誘を受けた顧客において、その担保ないし

保証を求める趣旨で、証券会社側に対し損失が

生じた場合にこれを補てんすることを求め、

両者の間に損失保証の合意が成立したような場合には、

特別の事情の存しない限り、断定的判断の提供と

損失保証の双方が顧客の株式買付けの意思決定に

影響を及ぼしたものと推認するのが相当であり、

損失保証の合意と株式買付けとの間にはもとより、

断定的判断の提供と株式買付けとの間にも

因果関係が存するものというべきである。

 

原審は、この点について、上告人本人の供述を根拠に、

E支店長の断定的判断の提供と本件買付けとの間に

因果関係が存しないと認定しているところ、

上告人本人の供述中には、E支店長の提供した

断定的判断を必ずしも信用することができなかったから

損失保証を求めた旨をいう部分もないではない。

 

しかしながら、上告人本人の供述全般を通じてみれば、

上告人としては、E支店長の提供した断定的判断を

全面的に信用することには躊躇を覚えたため、

その判断に誤りがあった場合に備えて

損失保証を求めた旨を述べているにすぎないのであって、

独自に入手していた情報等の客観的な裏付けに基づいて

右断定的判断を信用しなかった旨を

述べているものでないことは明らかである。

 

また、原審は、前記1(五)のような株価高騰の情報が

既に一般に伝わっていたことを挙げるが、そうであるとしても、

被上告人の支店長の地位にあるE支店長が重ねて

特定の株式の価格が騰貴する旨を断定的に述べることは、

顧客に対して利益を生ずることが確実であるとの

認識を強めさせる結果をもたらすものであって、

右の点がE支店長の断定的判断の提供と本件買付けとの間の

因果関係を断ち切るべき特別の事情に当たるということはできない。

 

4 そうすると、本件において、

他に首肯するに足りる特別の事情の存することについて

認定説示することなく、右のような上告人本人の供述部分のみをもって、

直ちにE支店長の断定的判断の提供と本件買付けとの

間に因果関係が存しないとした原審の前記認定判断には、

経験則違反ないし採証法則違反の違法があり、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

したがって、この点をいう論旨は理由がある。

三 以上によれば、原判決中、上告人の

予備的請求二に関する部分は破棄を免れず、右部分については、

E支店長の断定的判断の提供が社会通念上許容された限度を

超えるものであるかなど不法行為の成否について

更に審理を尽くさせる必要があるので、

これを原審に差し戻すこととし、本件上告中、

上告人の主位的請求に関する部分は、理由がないので棄却することとする。

 

なお、上告人は、損失補てん契約の履行を求める

予備的請求一に関する部分については

上告理由を記載した書面を提出しないから、

右部分に関する上告は、不適法として却下することとする。

 

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