武富士弘前支店放火強盗殺人事件

(平成19年3月27日最高裁)

事件番号  平成16(あ)727

 

本件は,被告人が,借金の返済資金等に困窮し,

ビル3階にある営業中の消費者金融会社店舗から金員を強奪しようと企て,

前日に下見をし,ガソリンを主成分とする混合油,

ライター,点火用の紙を用意するなどした上,

同店舗において,いきなり混合油約4ℓを店舗内カウンター内側の床にまき,

支店長らに対し,「ガソリンだ。」と叫んだ上,

ライター及び紙をねじったものを取り出して見せるなどして

脅迫し,金員を強取しようとしたが,

同人らが警察に通報するなどして

これに応じようとしなかったことから,

憤激の余り,支店長を含む従業員9名が

現在する同店舗に放火することを決意し,その際,

同人らが焼死するに至る可能性が高いことを認識しながら,

あえて,ライターで点火した紙を,床にまいた混合油の上に

投げ入れて火を放ち,よって,

同店舗をほぼ全焼させて焼損するとともに,

そのころ,同所において,従業員のうち

5名をいずれも火傷死させて殺害し,

4名にそれぞれ加療約4週間から

入院加療約7か月間を要する熱傷等の傷害を負わせたが

殺害するに至らなかったという強盗殺人,同未遂,

現住建造物等放火の事案である。

 

本件は,罪質が甚だ悪質であるところ,

混合油を脅迫等の手段として用いる強盗に至った動機や

経緯に酌量の余地がなく,支店長が

被告人の要求に応じなかったことに対する怒りと,

強盗が失敗したことに対する自暴自棄の気持ちから,

従業員多数に対する未必の殺意をもって

放火行為を実行した身勝手極まりない犯行である。

 

逃げ道のない室内で燃焼力の強い混合油に放火し,

恐怖におののいている被害者らを焼き殺すなどした態様は,

凶悪かつ残虐なものであり,当時20歳から46歳の

男女合わせて5名の命を奪い,4名の被害者に

後遺症を残すなどの重傷を負わせ,

建物3階部分をほぼ全焼させたという結果も,

極めて悲惨かつ重大である。

 

遺族や生存被害者の被害感情はいずれも厳しく,

本件犯行が社会に与えた衝撃も大きい。

 

以上のような犯情に照らすと,

本件犯行についての被告人の刑事責任は,

極めて重大であるといわざるを得ない。

 

そうしてみると,被告人が上記放火行為に及んだのは,

現場におけるとっさの決意によるものであり,

殺意が未必のものにとどまること,前科がないことなど,

被告人のために酌むべき情状を十分考慮しても,

原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,

やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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