福岡の暴力団組長による対立暴力団元組長射殺等事件

(平成19年6月12日最高裁)

事件番号  平成17(あ)1101

 

最高裁判所の見解

本件は,(1) 暴力団組長の被告人が,同組員4名と共謀の上,

他の暴力団の元組長を路上で射殺したという殺人等,

(2) 上記(1)の犯行の共犯者の一部らと共謀の上,

同共犯者中の他の1名を絞殺し,

その死体を土中に埋めたという殺人,

死体遺棄のほか,被告人単独による殺人未遂1件,傷害3件,

覚せい剤の自己使用1件等の事案である。

 

(1)の犯行は,上部暴力団組織の現会長に対する

反対派の生き残りである被害者を亡き者にすれば,

組織内で功績と評価され,地位が上がると考えて敢行したもので,

正に暴力団特有の論理に基づく反社会的な犯行である。

 

(2)の犯行は,(1)の犯行の共犯者1名が捜査の対象になったことを知り,

同人が逮捕されることにより自らの関与が発覚するのを恐れ,

口封じのため敢行したもので,自己本位で卑劣な犯行である。

 

いずれも周到な準備の上で敢行された組織的計画的犯行である。

 

殺害態様も,(1)の犯行では,至近距離から2名がそれぞれ

けん銃を発射し,銃弾8発を被害者の背部等に命中させ,

(2)の犯行では,3人がかりで被害者の首に針金を巻き付けて

左右から締め上げるなどしており,冷酷非情で残虐である。

 

2名の命を失わせた結果は誠に重大である。

 

遺族の被害感情も非常に厳しい。

取り分け,(1)の犯行は,平穏な住宅街の路上での凶行であり,

社会一般に与えた影響も軽視できない。

 

被告人は,これらの犯行を企図し,配下の組員に命じて

これを実行させた主犯であって,

(1)の犯行では,凶器のけん銃,実包を用意して

一方的に実行を命じたものの,命を受けた者が

なかなか実行に及ぼうとしなかったことから,

繰り返ししっ責して執ように早期実行を迫り,

具体的な殺害方法まで指示するなどし,

(2)の犯行では,殺害を命じた者から

仲間を殺すことだけはできないなどと

犯行を思いとどまるよう懇願されながら,

高圧的に実行を迫って強引に承諾させるなどしており,

各犯行は専ら被告人の発案,指示により

犯されたものというべきである。

 

しかるに,不合理な弁解をろうして,

自らが命じたことを否認しており,反省の情は認められない。

 

殺人未遂の犯行も,散弾銃を4発発射し,

多数の鉛玉を被害者の腰部等に命中させたもので,

被害者は,生命に対する重大な危険にさらされ,

重傷を負い,その後も重い障害に苦しんでいる。

 

被告人には,改造けん銃で被害者の下腹部に

銃弾を命中させて重傷を負わせた殺人未遂の犯行に係る前科を含む

多数の服役前科があるのに,又もや本件各犯行に及んだもので,

人の生命,身体を軽んずる犯罪傾向が顕著に看取される。

 

以上の事情に照らすと,

被告人の刑責は誠に重いというほかはない。

 

そうすると,一部の事件で被害者との間で

示談が成立していることなどの事情を十分考慮しても,

原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,

やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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