通知処分取消請求事件

(平成23年9月30日最高裁)

事件番号  平成21(行ツ)173

 

この裁判では、

長期譲渡所得に係る損益通算を認めないこととした

平成16年法律第14号による改正後の租税特別措置法31条の規定を

その施行日より前に個人が行う土地等又は建物等の譲渡について

適用するものとしている平成16年法律第14号附則27条1項と

憲法84条について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

4(1) 所得税の納税義務は暦年の終了時に成立するものであり

(国税通則法15条2項1号),措置法31条の改正等を内容とする

改正法が施行された平成16年4月1日の時点においては

同年分の所得税の納税義務はいまだ成立していないから,

本件損益通算廃止に係る上記改正後の同条の規定を

同年1月1日から同年3月31日までの間にされた

長期譲渡に適用しても,所得税の納税義務自体が

事後的に変更されることにはならない。

 

しかしながら,長期譲渡は既存の租税法規の内容を

前提としてされるのが通常と考えられ,また,

所得税が1暦年に累積する個々の所得を基礎として

課税されるものであることに鑑みると,

改正法施行前にされた上記長期譲渡について

暦年途中の改正法施行により変更された上記規定を適用することは,

これにより,所得税の課税関係における納税者の

租税法規上の地位が変更され,課税関係における法的安定に

影響が及び得るものというべきである。

 

(2) 憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の

手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものであるが,

これにより課税関係における法的安定が保たれるべき

趣旨を含むものと解するのが相当である

(最高裁平成12年(行ツ)第62号,同年(行ヒ)第66号

同18年3月1日大法廷判決・民集60巻2号587頁参照)。

 

そして,法律で一旦定められた財産権の内容が

事後の法律により変更されることによって

法的安定に影響が及び得る場合,当該変更の憲法適合性については,

当該財産権の性質,その内容を変更する程度及び

これを変更することによって保護される公益の性質などの

諸事情を総合的に勘案し,その変更が当該財産権に対する

合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって

判断すべきものであるところ(最高裁昭和48年(行ツ)第24号

同53年7月12日大法廷判決・民集32巻5号946頁参照),

上記(1)のような暦年途中の租税法規の変更及び

その暦年当初からの適用によって納税者の租税法規上の地位が変更され,

課税関係における法的安定に影響が及び得る場合においても,

これと同様に解すべきものである。

 

なぜなら,このように暦年途中に租税法規が変更され

その暦年当初から遡って適用された場合,

これを通じて経済活動等に与える影響は,

当該変更の具体的な対象,内容,程度等によって

様々に異なり得るものであるところ,

これは最終的には国民の財産上の利害に帰着するものであって,

このような変更後の租税法規の暦年当初からの適用の

合理性は上記の諸事情を総合的に勘案して

判断されるべきものであるという点において,

財産権の内容を事後の法律により

変更する場合と同様というべきだからである。

 

したがって,暦年途中で施行された改正法による

本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定の

暦年当初からの適用を定めた本件改正附則が

憲法84条の趣旨に反するか否かについては,

上記の諸事情を総合的に勘案した上で,

このような暦年途中の租税法規の変更及び

その暦年当初からの適用による課税関係における

法的安定への影響が納税者の租税法規上の地位に対する

合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかという観点から

判断するのが相当と解すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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