債務不存在確認請求本訴,不当利得請求反訴事件

(平成13年11月27日最高裁)

事件番号  平成12(受)375

 

最高裁判所の見解

(1) D(以下「D」という。)は,

第1審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有し,

これを上告人及びE(以下「上告人ら」という。)に建物所有目的で賃貸していた。

 

平成4年3月ころ,Dと上告人らとの間で,

1坪当たりの単価を52万円(1㎡当たり15万7296円)とし,

これに実測面積を乗じた額を代金額として,

本件土地を上告人らが買い取る話が進み,D側で測量を行うことになった。

 

(2) Dは,本件土地の測量を

F測量設計事務所ことG(以下「G」という。)に依頼し,

Gはこれを株式会社H測地(以下「H測地」という。)に

依頼した。 H測地は,本件土地の測量を実施したが,

真実の面積が399.67㎡であったのに,

求積の際の計算の誤りにより59.86㎡少ない339.81㎡を

実測面積と記載した求積図を作成し,Gを介してDに交付した。

 

(3) Dと上告人らは,平成4年7月30日,

本件土地につき売買契約を締結したが,

その契約書には,取引は実測によるものと記載されて

上記の求積図が添付され,本件土地の実測面積が339.81㎡と

明記された上,この面積に前記の単価を乗じた

5345万0800円が売買代金とされた(以下「本件売買契約」という。)。

 

なお,上告人とEが取得する持分は各2分の1とされた。

 

(4) その後,測量結果の誤りを知ったDは,

平成5年4月ころ,仲介業者をして,上告人らに対して,

売買代金が不足しているとして支払交渉をさせたが,

物別れに終わった。

 

なお,真実の面積によって計算した代金額と,

本件売買契約の代金額との差額は,

上記の1㎡単価15万7296円に59.86㎡を

乗じた941万5738円である。

 

(5) Gは,測量結果に誤りがあったことによる損害賠償として,

平成9年3月から同年5月にかけて,

上記の差額に迷惑料を加算した1000万円を

Dに支払った(ただし,うち660万0200円は,

GのDに対する債権と相殺された。)。

 

(6) H測地は,平成9年12月4日,Gとの間で,

測量結果に誤りがあったことによる損害賠償として,

Gに対して600万円を支払う旨の示談をした。

 

(7) 被上告人は,H測地との間で測量士賠償責任保険契約を締結していたところ,

平成9年12月18日,上記示談に係るH測地のGに対する債務のうち550万円を,

H測地に代わってGに支払った。

 

2 本件は,(1) 被上告人が上告人に対して,

民法565条の類推適用により,

又は本件売買契約の際に成立した清算の合意に基づき,

Dが上告人らに対して有していた上記差額に相当する

941万5738円の代金請求権について,

損害賠償者の代位(民法422条)及び

保険者の代位(商法662条)によって,

内金550万円を取得したとして,

その半額である275万円と遅延損害金の支払を求める反訴事件と,

(2) 上告人が被上告人に対して,

上記代金債務の不存在確認を求める本訴事件である。

 

原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判示し,

被上告人の反訴請求を認容し,上告人の本訴請求を棄却した。

 

(1) 本件売買契約は,民法565条にいういわゆる数量指示売買に当たる。

(2) 数量指示売買で目的物の数量が指示された

数量を超える場合において,当該売買契約に至る経緯や

代金額が決定された経緯等の事情から,代金の増額を認めないことが

公平の理念に反し,かつ,その増額を認めることが買主にとっても

対応困難な不測の不利益を及ぼすおそれがないものと

認めるべき特段の事情が存するときには,

民法565条,563条1項を類推適用して,

超過部分について,売主の代金増額請求権を認めるのが相当である。

 

本件では,上記の特段の事情が存するから,

Dは代金増額請求権を行使することによって,

上告人らに対して941万5738円の代金請求権を取得した。

 

(3) Gは,Dに対して債務不履行に基づく

損害賠償義務を履行したので,損害賠償者の代位(民法422条)によって,

Dの上告人らに対する代金請求権を取得した。

 

H測地は,Gに対して債務不履行に基づく損害賠償義務を履行したので,

同じく賠償者の代位によって,同人から600万円の限度で

上記代金請求権を取得した。さらに,被上告人は,

測量士賠償責任保険契約に基づき550万円を支払ったので,

保険者の代位(商法662条)によって,

H測地から550万円の限度で上記代金請求権を取得した。

 

3 しかしながら,原審の上記判断のうち(2)及び(3)は是認することができない。

その理由は,次のとおりである。

 

(1) 原審の上記判断(2)について

民法565条にいういわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,

買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときに

売主が追加代金を請求し得ることはいうまでもない。

 

しかしながら,同条は数量指示売買において数量が

不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における

売主の担保責任を定めた規定にすぎないから,

数量指示売買において数量が超過する場合に,

同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を

請求することはできないと解するのが相当である。

 

原審の上記判断(2)は,当事者間の合意の存否を問うことなく,

同条の規定から直ちに売主の代金増額請求権を肯定するものであって,

同条の解釈を誤ったものというべきであり,この判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

 

(2) 原審の上記判断(3)について

本件において,仮に,Dが上告人らに対して,

契約書に記載された面積を超過する部分について

代金請求権を有するとすれば,上告人らが任意の支払を拒んでいたとしても,

上告人らが無資力であって上記代金請求権が

無価値である等の特段の事情がない限り,

Dには上記代金請求権相当額について

損害が発生しているということはできない。

 

そうすると,上記特段の事情の存在について主張,

立証のない本件においては,Dに損害が発生したことを

前提とした損害賠償者の代位によるG及びH測地に対する

権利移転の効果を認めることはできないし,

さらにはH測地が損害賠償義務を負うことを前提とした

保険者の代位による被上告人への権利移転の効果が生ずるともいえない。

 

したがって,原審の上記判断(3)には,判決に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反がある。

 

なお,被上告人の主張は,結局,Dの上告人らに対する

代金請求権の順次移転をいうものであって,

前記1の(5),(6)及び(7)のG,H測地,

被上告人の各支払又は支払約束に際して,

Dが有した代金請求権の全部又は一部を順次譲渡する旨の合意が

あったとの主張を含むものと解する余地がある。

 

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