所得税更正処分取消請求事件

(平成22年3月30日最高裁)

事件番号  平成20(行ヒ)419

 

最高裁判所の見解

(1) 土地が土地収用法等の規定に基づいて収用され又は収用権を背景として

買い取られることとなったことに伴い,その土地の上にある個人所有の建物について

移転,移築,取壊し,除去等をしなければならなくなった場合において,

その所有者がその費用に充てるための補償金の交付を受けたときは,

当該補償金の金額は,本来その者の一時所得の収入金額と見るべきものである。

 

しかし,その者が上記の金額を交付の目的に従って

上記の移転等の費用に充てたときは,所得税法44条の規定により,

その費用に充てた金額は,各種所得の金額の計算上必要経費に算入され又は

譲渡に要した費用とされる部分の金額に相当する金額を除き,

一時所得の金額の計算上総収入金額に算入されないことになる。

また,上記の補償金のうち,当該建物の取壊し又は

除去による損失に対する補償金については,

措置法33条3項2号の規定により,

当該建物について同条1項所定の収用等による譲渡があったものとみなし,

その金額を当該譲渡に係る譲渡所得の収入金額である

同項所定の補償金等の額とみなした上で,同項を適用し,

その金額がその者の取得した代替資産の取得価額以下である場合には

上記の譲渡がなかったものとし,その金額が当該取得価額を超える場合には

上記建物のうちその超える金額に相当する部分について

譲渡があったものとして,

その年分の譲渡所得の金額の計算をすることを選択す

ることも許されるものである。

 

ただし,同条5項は,同条1項1号等に規定する補償金の額は,

名義がいずれであるかを問わず,資産の収用等の対価たる金額をいうものとし,

収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の

収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとすると定めており,

同項の補償金等の額とみなされる同条3項2号所定の

「資産の損失に対する補償金」の額も,これと同様に,

土地の収用等に伴い取壊し又は除去により失った資産の対価に

相当する金額をいうものと解するのが相当であるから,

土地の収用等に伴いその土地の上にある

建物の移転等に要する費用の補償を受けた者が,

当該建物を取り壊して代替資産を取得した場合,

当該補償を受けた金額のうち同号所定の補償金に当たるのは,

当該建物の対価に相当する部分に限られるものというべきである。

 

(2) ところで,「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」

(昭和37年6月29日閣議決定)24条1項及び

「公共用地の取得に伴う損失補償基準」

(同年10月12日用地対策連絡会決定)28条1項は,

取得し又は使用する土地等に取得せず又は使用しない建物等があるときは,

当該建物等を通常妥当と認められる移転先に,

通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償する旨を定め,

これを受けた「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」

(同38年3月7日用地対策連絡会決定。以下「本件細則」という。)第15は,

① 建物を移転させるときは,通常妥当と認められる移転先を

残地又は残地以外の土地のいずれとするかについて認定を行った上で,

当該認定に係る移転先に建物を移転するのに

通常妥当と認められる移転工法の認定を行い,

当該移転先に当該移転工法により移転するのに要する費用を補償するものとし,

② 通常妥当と認められる移転工法は,再築工法,曳家工法,

改造工法,復元工法及び除却工法とし,

③ 再築工法(残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築し,

又は残地に従前の建物と同種同等の建物若しくは従前の建物に

照応する建物を建築する工法)を妥当と認定した場合の建物の移転料は,

建物の現在価額,運用益損失額(従前の建物の推定再建築費と

従前の建物の現在価額との差額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの

運用益に相当する額)及び取壊し工事費の合計額から

発生材価額を差し引いて算定した額とする旨を定めている。

 

そうすると,再築工法による移転を前提に本件細則の定めに準ずる方法で

算定された建物の移転料の交付を受けた者が,その交付の目的に従って,

従前の建物を取り壊し,代替建物を建築して取得した場合には,

当該移転料のうち,① 従前の建物の現在価額から

発生材価額を差し引いた金額に相当する部分は,

その全額について,② 運用益損失額に相当する部分は,

代替建物の建築に実際に要した費用の額が

従前の建物の現在価額を超える場合において,

その超える金額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの

運用益に相当する部分について,

③ 取壊し工事費に相当する部分は,

実際に従前の建物の取壊し工事の費用に充てられた部分について,

それぞれその交付の目的に従って移転等の費用に充てられたものとして,

所得税法44条の適用を受けると解するのが相当である。

 

また,これらのうち上記①の部分については,更に,

従前の建物の対価に相当するものとして,

措置法33条3項2号所定の補償金に該当し,

同条1項の適用を受けると解するのが相当である。

 

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